大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和32年(う)689号 判決

被告人 片岡松市

〔抄 録〕

よつて考察するのに、被告人に対する指紋照会書並びに原審第二回公判調書中被告人の供述記載によれば被告人は昭和二十年九月十九日大湊警備府軍法会議において戦時逃亡、違令、加重逃走、戦時窃盗、戦時住居侵入罪により懲役七年に処せられ(同年十月十七日勅令第五百七十九号大赦令により戦時逃亡、違令罪につき赦免されたため、その余の罪につき同年十一月五日同軍法会議の決定により懲役五年に処せられた)その刑の執行中、昭和二十七年四月二十八日政令第百十八号減刑令による減刑の結果刑の執行を終了して即日釈放されたものであることが明らかであるところ、本件窃盗罪(昭和三十一年十一月二十五日)は右刑の執行終了後五年内の所犯であるから刑法第五十六条第一項第五十七条に則り所定の刑に累犯加重をした刑期範囲内においてこれを処断すべきであると同時に、原判決言渡(昭和三十二年二月二十二日)当時もなお右刑の執行終了後五年を経過していなかつたのであるから刑法第二十五条(第一項第二号)を適用するに由がなくその刑の執行を猶予し得べき限りではなかつたものと言わなければならない。果して然らば原判決が本件につき窃盗罪の刑に前叙累犯加重をなさずただその所定刑期範囲内において被告人を懲役壱年に処し、しかも刑法第二十五条を適用して五年間右刑の執行を猶予する旨の言渡をしたのは、右前科及び受刑の事実を誤認看過したか、または法令の解釈適用を誤るの過誤を冒したものに外ならず、これが判決に影響を及ぼすことは多言を要しない。論旨は結局その理由あるに帰し、原判決は破棄を免かれない。

(三宅 河原 遠藤)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!